もてまん

すると、繁さんが急に真面目な顔つきになってね、

『また会ってもらえますか』

って、ホントに真剣な目でじっとあたしの目を覗きこんで聞いたのさ。

あたしはさ、もうすっかり繁さんに気を許してただろ、

『勿論です』

って、あんまり深く考えずにすぐさま答えた。

そう答えた瞬間、あたしは繁さんに抱きしめられていたのさ。

彼はあたしをきつく抱きしめて、震えてたんだよ。

息もつけないほどぴったりと身体をくっつけて、彼の震えが痛いほど伝わってきて、次第にあたしも震えてきた。

嗚呼、あたしは愛されてる。

あたしも、この人を求めてる。

そう素直に感じられた。

その日から、二人は離れられなくなっちまったのさ。


また会って初めてでって?


確かに、あたしは初めて会ったわけだけど、繁さんは、ずうっとあたしのことを想い続けてくれてたんだから。

あたしが惚れっぽい?

一概にそうとは言えないよ。

日本にいた三十年の間、あたしには浮いた噂ひとつなかったんだ。

固い女だったのさ、身も心もね。

フランスに渡って、あたしの人生は開かれたのかもしれないね……

運命だったのさ……

こうやって恋に落ちる……ね……」
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