もてまん
お父上の田舎は新潟でね、冬雪が降る前に一度、お母上が冬用の衣類や食べ物を持って来てくれたそうだよ。
春になったら、また来るからって約束したそうだけどね。
でも、年が明けると東京に空襲が頻繁に襲うようになって、そのうちラジオのニュースで立川に爆弾が落ちたって何度も耳にするようになって。
それっきりご両親の安否を確かめるすべもなく終戦になったんだそうだよ。
万が一にも生きてる可能性を捨てきれず、二人は両親からの便りを待ち続けた。
でもね、終戦の夏を過ぎて、秋になっても、繁さんたちを迎えにくる人はいなかった。
そのうち、お父上の実家でもね、二人をやっかい者扱いにし出したそうだよ。
当時、お姉さんは六年生、繁さんは五年生、食べ盛りの子供二人だ。
食糧難のあの時期、無理もないさ。
二人して学校の勉強そっちのけで、家の手伝いやら、畑の手伝いをして、一生懸命働いたんだそうだ。
どうにか二人一緒に置いて貰おうと、必死だったんだね。