もてまん
そして、冬を迎えようとした調度その頃、復員兵が一人、その実家を訪ねてきた。
彼はお母上の弟で、その叔父さんが二人を迎えに来てくれたんだそうだ。
叔父さんの話ではね、立川は焼け野原だったそうだよ。
戦地から、やっとの思いで日本にたどり着いて姉を訪ねると、その有様だろ。
皆死んでしまったに違いないって、叔父さんも最初は途方に暮れた。
でも、気を取り直して、生き残りの人達を訪ね歩いて、色々聞き集めて、やっと子供たちが新潟に疎開してるってことを突き止めたんだそうだ。
良かったよ……本当に、良かった。
そのまま田舎に残されてたら、きっと奉公にでも出されて、あたしとフランスで会うなんてこともなかったろうさ。
それから、叔父さんは二人を大切に育ててくれた。
彼は、畳職人でね、戦後の復興で仕事には困らなかった。
それほど裕福でもなかったけど、三人で力を合わせて、家事も分担して、結構楽しくやってたそうだよ。
そんな毎日の生活に追われるなかでも、叔父さんは、二人にいつも、これからの日本を支えるのはお前たち子供らの仕事だ、ちゃんと勉強して皆のためになる仕事をするんだぞって、学業だけはおろそかにするなって厳しく言ってたそうだよ。
何も、それは特別なことじゃない。
その頃の日本人は、皆が皆、そういう気持ちで生きていたんだ。