もてまん

ところが、お姉さんの高校卒業を目の前にして、叔父さんの具合が急に悪くなった。

何でも肺結核だったって。

昔は結核を患う人が結構いたんだ。

衛生状態も栄養状態も今ほど良くなかったからね。

それで仕方なく、お姉さんは高卒で勤めに出た。

繁さんを大学にやるためにね。

繁さんは、お姉さんの苦労に報いようと、一生懸命勉強したそうだよ。

で、東京大学に合格した。

叔父さんも喜んでくれてね。

安心したのか、その後、一年もたたずに亡くなったそうだよ。

なんだって?

いくらがんばっても、東大なんて無理だって?

人間、死ぬ気になりゃ、なんでもできるもんだよ。

やる前から諦めてどうするんだい、いい若いもんが。
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