夏の空の虹
イロイロ考えてると

呼吸がしずらくなってきた。

あぁ

もう来たかな?

こんなに大勢の人に

囲まれて死ぬのは

多分、俺くらいだな。

みんな、何か叫んでいた。

でも、耳がぽっーとして

何を言ってるのか

分からない。

だんだん目が重くなって
















―ぴっぴっぴっぴぴ

音が一瞬聞こえた。

目が後、数ミリで閉じる寸前に聞こえた。

『ありがとうっ!!!産まれて来てくれて…ありがとう!!!!!!!!』

聞こえた。

耳に響いた…お母さんの声………。





もうダメだって思った。

でも

踏ん張って口を開いた。

言いたかった…最後に一度だけ…言わせて下さい…神様時間を下さい。
















「産ん…でっ、くっ…れてありが…と…うっ………」
言えた…。

ありがとう、神様。




目を閉じる瞬間

目に見えたのは

病室の外で輝く

夏の終わりを告げる空

そして…

まるで地球の広さを教えるように

丸く広がる

大きな、大きな

虹だった。







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