猫マンションとねずみの塔
その後、僕はすぐに彼の顔を見る気がしなかった。見なくても、どういう顔をするか僕は嫌というほど分かっていた。彼は小さい子供がお菓子屋さんのガラスケースに両手をべったりと張り付け、顔を近付けて嬉しそうにしている様子にとても似ていた。

「やっぱり。どうして、そんなに嬉しそうなんだよ」

僕は嬉しそうなウェスリーの顔を見たら、何だか話す気が失せてしまった。そのせいで溜め息まで出て来てしまった。

「だって。もしかしたら、まだ近くにいるかもしれないだろ。見てみたいなぁ」

ウェスリーは学校では有名な幽霊好きだ。
いつも怪しげな本を学校で堂々と読んでいて、時々、意味不明な呪文を唱えている。けれど、悲しいことに、彼には才能がないらしい。霊感がなく、一度も幽霊を見たことが無いのだ。
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