戦場駆け征く
そこで、ふ、と気付いた。

王の横で、矛を手に護衛をする男に。…その男も、気付いているようだった。口角を上げて笑っている。

そう、あの時の男だった。
名も知らない、ただの客。



王の笑い声で、彼から目を離した。

「立派だな、漣犀。お前は将来英雄と呼ばれよう」

「王様」

春鈴が口を挟んだ。春鈴にしては珍しい、おどけた口調であった。


「漣犀は、将来戦神と呼ばれます」



皮肉なものだ。彼女の珍しい冗談が、本当の事になるなど。
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