戦場駆け征く
背後から矢が飛んできて、顔を掠めて行った。あの小さな矢でも、あと数歩右側に立っていたら命は無かった。

そう、自分が何時死ぬかなど、誰も分からないのだ。


この連鎖を絶つには、自分が修羅に成るしかない、

頭の中で冷静な誰かがそう言ったのが聞こえた。


「死ねぇえ!」
振りかぶられた戟。
その動作の速度などたかが知れている、剣は容赦無く戟を握る右手を切り落とした。赤い霧が舞う。

胸に剣を突き立て、また別の兵士に向かって走り出す。ぶしゅ、ざく、と惨劇が繰り広げられる。




『…俺はまた、少しずつ人間じゃなくなっていく』



確かにそうだったよ、藍侫。そう心の中で呟く。
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