戦場駆け征く
「俺も最初、そう思ってたよ」

「だろ?…前したっけ、俺の故郷の話」

何とか鉄甲の錆を落とし、獣の皮で出来た袋に納める。

「ああ、確か途中まで。小さな村で生まれた、ってのは知っている」

邑丁は腰に差した剣を抜く。美しい、とは言えなくとも、綺麗な装飾が施された剣であった。

「碌でもない親だったんだ、奴らは。妹を凌辱した。俺を殺そうとした。兄貴を殺した。…憎かった」


美しく澄んだ剣に映るのは、歪んだ笑みを浮かべた青年。

彼は血に狂っていた。

この顔をするのは、もう人を殺すことを厭わなくなった人間だけだ。
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