戦場駆け征く
「だから殺した。滅多刺しにした。あの貧しい家であいつらだけが肥えていた。燃やそうとも思ったけれど、止めた。替わりに急所は外し続けてやった。あいつらは死にそうな顔で悶え苦しんでいた。ざまあみろ。そう思った」


笑う。笑う。歪みつづける。

光景が目に浮かぶ。少年は短剣を手に佇む。眠っている両親。入ることなど許されなかった絶対的な者達の部屋。

手足を床に打ち付けると、それからは赤い、赤い残像。

戦場に居れば、赤い死体をよく目にする。が、彼の赤は憎しみと怒りによる赤。悍ましさが背中を伝った。
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