戦場駆け征く
「なあ、漣犀は昔何をしていた?」

にこにこと笑いながら、邑丁は問うた。過去は過去として振り切っているのだろう。邑丁は、強く見えた。

「…男娼、かな」

邑丁は少しの驚きを見せた。

「へぇ。何で軍に入ろうとか思ったわけ?」

「春鈴様に拾われたんだよ」

うわ、と邑丁は言う。

「ちょっと待て、春鈴様って あの鬼春か?」

「あだ名を付けられて困るってぼやいてたな」


邑丁はああああ、と一人で頭を抱えた。

「誤解しているみたいだけど。春鈴様はそんな恐ろしい方じゃないよ」

「いや、信じられんね」

邑丁は苦笑する。


…事実なのだが、と、何度言っても邑丁は首を振った。
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