戦場駆け征く
矢が城壁から降って来る。

篭城戦に持ち込むことが出来たが、これからが勝負所だった。

門を何度となく突き破ろうとする歩兵隊。天から慈悲のかけらもなく降り注ぐ矢の雨。

地上から様々な策を巡らす軍師、雲梯を架けて城壁に攻め込む兵。

死骸が足元に転がっていた。馬から落ちたのであろう彼の背中には、小さな矢が刺さっていた。たったこれだけのことで人は死ぬ。いつ、誰が死ぬかさえ分からない。次は自分かもしれないのだ。


ドン、ドン、と門を叩く音がする。その度にみしりと門扉は軋む音を立てる。もう、少しだ。漣犀は空を仰ぐ。城壁から玲軍を見下ろす弓兵。目が合ったような気がした。


―彼は、梯子で攻め込んだ玲兵の振りかぶった刃で二つに裂かれ、赤い飛沫を散らして死んだ。

戦場だ。当たり前のこと。

瞬間――

一際巨大な音がして、門扉を閉ざしていたのだろう閂が壊れ、門が開いた。
< 88 / 102 >

この作品をシェア

pagetop