戦場駆け征く
漣犀は偃月刀を握る手に力を込めた。剣はまだ、抜いていない。

叫び声を上げて走り出す仲間を追って、漣犀も走り出した。

――何の容赦もなく振り抜かれた偃月刀。一人の首が落ち、数人の体を切り付ける。


今、漣犀は確実に一人の命を奪った。断末魔を上げる間もなく地に落ちた首。目を見開いて、漣犀を見つめていた。

罪悪感ならとうに麻痺した。

その重みに、人間は耐えることが出来ない。

しかし今首を落とした男のために祈る間は無い。死ぬか生きるか。

実際、剣や槍がこの首を狙ったなら斬り合うことが出来るかもしれないが、何処かから矢が飛んできたら、自分にはそれを避ける術はない。
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