戦場駆け征く
名将と名高い者ならば、それを手で掴むことも出来るかもしれない。春鈴なら、避け方も心得ているかもしれない。しかし、まだ、自分はその極意を知らない。


自分に出来るのは、走り続けて斬り続けることだけ。

生き残るにはそれしかないのだ。生き残らねばならない。

春鈴が待っている――いや、もし自分が死んでも、春鈴は「戦の常だ」と涙すら流さないかもしれない。


ただ、春鈴の顔を見られなくなるのは、嫌だった。

自分を拾った女。自分に稽古を付けた、得体が知れないほどに強い将軍。
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