初恋タイムスリップ【完】
「うん…」
私って…どうして緊張すると何も話せなくなるんだろう。
成海くんの周りにいる女子たちみたいに、気軽に話せたら、どんなに楽しいだろう。
どうして思っていることを言えないんだろう。
成海くん・・この曲名はね・・
成海くん・・その映画はね・・
成海くん・・優しい曲って言ってくれて
ありがとうって・・
どうして、言えないの・・私・・
どうして・・・
ピアノの椅子に座ったまま、
掌に汗をかいた両手で、自分の制服のブレザーの裾を
ぎゅっとにぎった。
沈黙が苦しい…
成海くんがピアノから腕を下ろした。
「あ・・・
ありがとね。また聴かせてよ。じゃあ俺、部活いくから」
そういって成海くんは、行ってしまった。