初恋タイムスリップ【完】
小さな橋を過ぎて、またしばらく歩くと、
冷たい風が優しくふいて、少しだけ私の髪とスカートを揺らした。
今日はずいぶん寒い
「寒い?」
成海くんが覗き込むように言った。
「…大丈夫」
顔を覗き込まれて、恥ずかしくなってさらに下をむいた。
「桜木」
成海くんは、私の名前を呼んで立ち止まった。
私も立ち止まって、成海くんを見上げた。
成海くんは私の前に立って、自分のマフラーを外し、私の首にマフラーを巻いてくれた。
温かい………
成海くんの温もり
自分とは違うにおい
ドキドキした。
「少しは温かくなった?」
「うん。ありがとう。成海くんは…大丈夫?」
「大丈夫だよ」
またあの笑顔で笑った。
成海くんの体温が残るマフラーに温められながら、それから家まで
二人、何も話さずに歩いた。
あっという間に家の前についてしまった。
ここから壁で挟まれた細い道を10メ−トルくらい歩いたところに家の門がある。
「ここ?」
「うん。この細い道の先に家があるの」
たくさん聞きたいことがあったのに、何も聞けなかった。
一度も自分から話しかけることができなかった。
こんなチャンス…もう二度とないのに…