初恋タイムスリップ【完】
何度弾いただろう。
ずっと弾きたくても弾けなかった曲を弾けた喜びで、何度も夢中で弾いた。
「やっぱこの曲いいな…」
びっくりして声がした方を見た。
成海くんが廊下側の1番後ろの席に座っていた。
「成海くん…」
「部活早めに終わったよ。なんか…話しがあるんだろ?」
「あ…うん」
「じゃあ…帰るか?」
「うん」
私は鍵を返しに職員室へ行き、久しぶりに瀬戸先生に会い、下駄箱までダッシュした。
そしてまだ明るい外に、成海くんが待っていてくれた。
私を見つけてまた笑顔。
私は今日一日何回泣くんだろう…
「どうした?」
成海くんは私の頬っぺたを触ってのぞきこんだ。
「ほら…」
成海くんは右手を出した。
私は成海くんの手を握った。
もう一度感じたかった
この
成海くんの手の感触。
温かい…
何をどこからどう話そうか、いろいろ考えていたら、結局無言で歩いていた。
そして、家に続く細い道の前まで来てしまった。
「話って…何?」
「うん…あ、あのね…
座って話そうか?」
そういって、家に続く細い道の途中にある。大きな四角い岩みたいな石を指差した。
成海くんに手を引かれて二人石に座った。
この細い道は壁に挟まれていて、周りがほとんど見えないから、なんだかドキドキした。
その時…
ぐぅ〜〜〜〜〜
は!お腹が鳴ってしまった。
お昼ご飯食べてなかったからだぁ…恥ずかしい。。
成海くんは笑いをこらえていた。
「ちゃんと食べろよ?体大丈夫か?」
成海くんは私の頭をポンポンとした。
隣に座りながらされたから、ドキっとした。