ドーンッッッ!!
入口近くに居た男子生徒に聞いてみる。
名も知らない彼は、一瞬戸惑った風だったが
教室内を見て「あそこに座ってるけど?」と、教えてくれた。
「あ…どうも…」
指された指の先には確かに京太郎が居たが、明らかに様子がおかしい。
彼はこちらを見るでもなく、ただ 椅子に座り、窓の外を眺めているだけだった。
「…おい、京太郎…具合でも悪いのか?」
「あ…。堤君。おはよう。…別に体調はいつも通りだけど…?
それより僕に何か用?」
ニコリと微笑む京太郎は、いつもの京太郎じゃなかった。
「おま……ホント、どうしたんだよ。具合が悪くないんだったら、何でそんな呼び方…」
“タイちゃん”って言ってたじゃん。
“京ちゃん”って呼べって言ってたじゃん。
「え…?呼び方に不満でもあった…?じゃあ…何て呼んだらいいかな…」
何だよソレ。
何で他人行儀なんだ。何で馴れ馴れしいお前じゃない。
「お前…何があった。この土日で、何がお前を変えた?」
「何言ってるの?前から僕はこんな感じだったでしょ?」
「ちげぇよ…。もっとお前は……!!…あの電話…。
土曜、どうして俺に電話してきた?
聞きとりにくかったが、アレはお前の声だった。あの時、何があったんだ?」
『土曜…』そう呟きながら、考え込む姿勢になる京太郎。
しかし、やはり何も思いつかなかったようで、プルプルと横に首を振りながら
とんでもない事実を告げてきたのだった。
「悪いけど、覚えてないよ。
だって僕、土曜の夕方から今日の深夜、家の前に立っていた時までの記憶が
無いからさ…」
…あの時、何故俺は電話をかけ直さなかったのだろう。
コイツが変わってしまったのは
俺の責任なのだ。