Dandelion‐天使の翼‐

テルの背中には大きな火傷の跡がある。

父親からの虐待で、熱湯をかけられそうになった妹を庇った時についたそうだ。



「兄妹の絆の印だね。」


あたしはそう呟いて、背中の広範囲に渡る火傷の跡にそっと触れた。

マーブル模様にも似たその跡は、他の場所より、ツルツルしている。



「…最後まで、守れなかったけど」


振り返ったテルの唇が、あたしの首筋にそっと触れる。


まるで、壊れ物を扱うようなテルとの柔らかく優しいセックスは、少しだけあたしのざわついた心を落ち着かせた。



ダイゴとかいう超人なんかより、テルの無難で優しいセックスの方が数十倍、気持ち良い。



あたしはそう、思う。



「…気持ち良かったのか?
………ダイゴってヤツ。」


あたしの胸の声が聞こえたのか、テルがあたしの隣ですこし頬を赤らめて言った。


「…気になる?」


小さく笑いながら言うと、テルは「別に」と言って立ち上がり、冷蔵庫に向かった。


いかつい顔して、案外可愛い。



そう思いながら、完全に色素の抜けた金髪の頭を見つめた。
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