Dandelion‐天使の翼‐


――…コトン…



黙って向かい合うあたしと彼の間に、マグカップが一つずつ置かれた。


目の前に居るのが……弟?


確かにどことなく、遠い記憶の中の母親に似ている気がした。



静かで重たい沈黙を一番に破ったのは、テルだった。


「…で…君がシイナの…」

「弟です!!レオって言います!!」


レオは元気いっぱいの笑顔を見せた。

キラキラとした瞳があたしを愛おしげに見つめる。



この子はきっと、世の中の汚れを何も知らないんだろうな。



直感でそう思う程、透明感のある少年。


あたしとはまるで正反対。


こんなに正反対でも本当に"姉弟"なんだろうか。



あたしがマグカップのブラックコーヒーをすすると、再びテルの口が開いた。


「…なんで、ここに来たんだ?」


テルの言葉に、レオは「…それはですね…」と呟きながらポケットから二枚の写真を取り出した。
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