Dandelion‐天使の翼‐
「…で、あたしに何か用?」
両手でマグカップを包みながら言ったあたしの言葉に、レオの表情から一瞬にして笑みが消えた。
「…母に…」
レオは言いにくそうに呟く。
「母に…会って欲しいんです…
会って…許してあげて欲しいんです…」
うつむいて言うレオ。
会う…?許す…?
そんな事が出来るほどあたしの器が大きかったら、既にそうしてただろう。
彼女が…死ぬ前に。
「一度だけで良いんです…
顔を見せてあげては貰えないですか…?」
今にも泣きそうな表情であたしに懇願するレオに、あたしは困惑した。
テルも、難しい顔をしている。
重い空気がそこには流れていた。
「…ごめんなさい…」
それを断ち切るように、あたしは小さく言う
「まだ…心の準備が……」
あたしの返事に、レオはガクっと肩を落としたが、すぐに笑顔を取り戻した。
「…ですよね。
そんなすぐに許すなんて
出来ないですよね。」
レオの笑顔が、切なく見えた。