Dandelion‐天使の翼‐
次の日。
仕事がオフのユキが、いつもの様にあたしの部屋に遊びに来た。
「えっ!?シイナの弟?」
ダイニングの椅子に座ったユキが、びっくりした様子で言った。
「そうらしい。」
「どんな子?可愛い?」
年下男に目の無いユキは、目尻を下げて言う。
「イケメンだよ。」
「えっ!マジで!?」
あたしが言うと、ユキは首を伸ばして隣の部屋に繋がるふすまの隙間を覗いた。
昨日はあの後、もう母親の話題をする事はなく、他愛もない話をし、長旅に疲れていたレオは先に眠りに就いた。
バイトに出たテルを見送り、仕方なくリビングで眠る羽目になったあたしは、体の節々が痛い。
肩を回していると、ユキはあたふたと化粧直しを始めた。
「…何してんの?」
怪訝な顔つきでユキを見る。
「イケメンって聞いたら、黙ってらんない。」
真剣に鏡を見るユキは、平然とそう言った。