Dandelion‐天使の翼‐
何も言えずに黙って居ると、更にユキが続ける。
「…線香くらい、あげに行っても良いんじゃない…?」
いつかは会いに行くべき時が来ると、心のどこかで分かっていた。
4年前、母親が亡くなった時からずっと。
だけど、やっぱり怖くて。
「…まだ、行けない。」
そう言ってずっと避けてきた。
4年前から変わらないあたしの答えは、今になって自分を苦しめていた。
「…本当は、もう許してるんでしょ?」
ユキの言葉に沈黙を続けていると、レオが部屋に入って来た。
「何の話してたんですか?」
無邪気なその笑顔から、あたしは思わず視線を逸らす。
「ん~?秘密ぅ~」
ユキがおどけながらレオに言うのを横目に、あたしはコーヒーをすすった。
「…ねぇ、レオくんはいくつ?」
ユキが甘ったるい声で聞く。
「あ…16です。」
「16!?若~い!!」
「ユキさんも、若いじゃないですか」
ユキとレオの楽しそうな会話が、部屋に響いていた。