Dandelion‐天使の翼‐
Chapter3
―…カチャカチャ…
ユキが帰る頃には、もうすでに夕陽が部屋に差し込んでいた。
洗い物をするあたしの後ろには、テルが置いて行ったゲームを真剣にするレオ。
「―…あのさ…」
話しかけても、彼の耳には入っていないようで、ゲームの効果音だけが部屋に響く。
あたしは、洗い物をすべて終えて手を拭くと、レオの方に歩み寄った。
「レオ…くん?」
あたしの声に、レオの手がピタリと止まる。
「はい?」
ゲームを中断させたレオがあたしの方を向いた。
静かになる空間。
時計のカチカチという規則正しい音が妙に部屋に響いて、そこから何も言葉が出ない。
「……っと…あの……」
じっと、あたしを見つめる2つの丸い瞳に胸の奥をチリチリと焦がされていく。
「……散歩…行かない?」
苦し紛れに行ったあたしの言葉に、レオは嬉しそうに笑った。
「いいですね」
笑うと細くなるその目は、どことなく懐かしい印象だった。