Dandelion‐天使の翼‐
「……泣かないで…」
レオにそう言われて、初めて自分が泣いている事に気付いた。
手を振りほどいて涙を拭う。
だけど、まるで堰を切ったかのように流れ落ちる涙は止まらなくて、あたしはその場にしゃがみこんだ。
そんなあたしの頭に、レオの優しい手がのせられる。
「…シイナ…」
「…見な……いで。」
泣き顔を見られたのは何年ぶりだろう。
恥ずかしくてうつむくあたしを、レオの腕がギュッと抱き締めた。
細く見えていたその腕は、意外と逞しくて何故か余計に涙がこぼれた。
「……寂しかった…」
思わず出たあたしの言葉に、あたし自身が一番驚いた。
レオは、子供みたいに泣きじゃくるあたしを何も言わずに力強く抱き締めていた。
ユキの言うように、本当はずっと前から許していた。
と言うよりは、元々母を恨んではいなかったのかもしれない。
あの施設には沢山、親の居ない子が居て、みんなが自分の両親を恨んだり、大人を恨んだりしていたから。
あたしもそうじゃなきゃいけないって、どこかで思って居たのかもしれない。
あたしだけじゃない。きっと、みんな。
寂しかっただけなんだ……