Dandelion‐天使の翼‐
「…行くよ……会いに」
すっかり静かになった河川敷の空は、群青色に染まりつつあった。
遠くにキラキラと輝く一番星が見える。
「…良かった…」
レオは今までとは違う、安堵したような微笑みを見せた。
その優しい笑顔に、あたしの胸のつっかえていたモノがスッと取れた気がした。
「…シイナが行ったら、きっと喜ぶよ。お母さん。」
レオは遠くを見ながら、笑って言った。
その横顔は、まだ16歳とは思えないくらいに大人びていて、少し見とれた。
白い肌に真っ黒な瞳、少しだけ色づいた頬。
落陽の微かなオレンジに照らされたその姿はまるで……
「………天使みたい…」
「ん?」
「や…何でも……」
そんなあたしを見て、レオは「変なの」と、呟いた。
「―…帰ろっか。」
そう言った頃には、既に日が沈んで、辺りは暗闇になっていた。
頭上に光る丸い満月が、あたしたちを見下ろしていた。