Dandelion‐天使の翼‐
―…プルルルル…
甲高い警告音が鳴り響いて、あたしは電車に乗り込んだ。
「ごゆっくり」
そう、笑顔言うユキの傍らで、
「着いたら連絡しろよ」
って、どこまでも心配性なテル。
「わかった。じゃあ、行ってきます。」
2人にそう言うと同時に、目の前の扉がゆっくり閉まった。
2人は本物の家族なんかじゃないけど、あたしにとってかけがえのない、家族以上の存在。
2人が居なきゃ、きっと今のあたしは無かった。
小さくなっていく2人を見ながら、改めてそう思った。
「…ありがとう。」
そして、遠くで手を振る2人に向かって、小さく言った。
ボーッと流れる景色を眺めるあたしに、可愛い声がかけられた。
「…おねぇちゃん、すわらないの?」
ふと見ると、足元で小さな男の子があたしを見上げていた。
5歳くらいだろうか。
クリクリとして綺麗な黒い瞳は、レオを連想させた。
「こっち、あいてるよ」
男の子はそう言ってあたしのワンピースの裾を掴むと、席まで連れて行ってくれた。