Dandelion‐天使の翼‐
「コラッ!マコト!!
ちゃんと座ってなさい!!」
彼のお母さんらしき人が、彼の腕を引いた。
「はぁい。」
ムスッとした表情の彼に、あたしは微笑む。
「…ごめんなさいね…
あ。ここ座ってください」
アタシより少しだけ上だろうか。
まだ若い母親は空いてる席から荷物を下ろした。
「…すいません」
お言葉に甘えてそこに座る。
「おねぇちゃん、どこいくの?」
シートにちょこんと座った男の子が言った。
母親が「コラッ」と制止する。
「広島だよ」
「ひろ…しま?」
黒く丸い瞳の奥にクエッションマークが浮かんだ。
「……ぼくはね、きょうとに行くの!
おばあちゃんにあいに!!」
にっこりと嬉しそうに笑う男の子。
「おねぇちゃんもね、お母さんに会いに行くんだよ」
言葉にすると、なんだかくすぐったい。
苦笑いを浮かべるあたしに、男の子は相変わらずの笑顔で言った。
「おねぇちゃんのママも、ぼくのおばあちゃんみたいに、よろこぶね。」
男の子は無邪気に笑った。