Dandelion‐天使の翼‐
男の子と別れた後、広島にはあっという間に着いた。
見慣れない土地に足がすくむ。
とりあえず、目の前で止まっていたタクシーに乗り込むと、ポケットの中の住所を伝えた。
すると、丸々と太ったタクシー運転手は、気さくな笑顔をあたしに向ける。
あたしも笑顔で返すと、窓の外を流れる景色をを眺めた。
もうすぐ、もうすぐなんだ。
そう思うと、ドキドキと心臓が高鳴る。
「…この辺ですね。」
タクシー運転手は、車を止めながら言った。
「…ありがとうございます。」
あたしは、表示された料金を差し出し、タクシーを降りた。
そこは、閑静な住宅街。
右にも左にも大きなお屋敷が建っている。
本当にこの辺なのか。
あたしはメモを見つめて、そこに書かれた名前と同じ表札の家を探した。
「…あ……」
その家は、案外あっさり見つかった。
あたしの想像以上に大きな屋敷。
大きな門が、あたしの目の前にそびえ立っていた。
手足が震える。
そして、ゆっくりとインターホンのボタンに手を伸ばした。