Dandelion‐天使の翼‐
「………シイナ…と申します」
あたしが名前を名乗った瞬間、中年女性の顔が一瞬にして蒼白した。
「…シ…イナ……」
カタカタと震える女性に、「大丈夫ですか?」と声をかけてみたが、聞こえて居ないようだ。
不思議に思って見ていると、中年女性は小さく口を開く。
「……どうやってここを…?」
目を見開いたままの女性に、あたしはメモを出そうとポケットに手を突っ込んだ。
しかし、手に紙の感触はなく、ポケットの中には何も入っていなかった。
さっき、確かに入れたはずなのに…どこかに落としたのだろうか。
あたしは中年女性に視線を移すと、一呼吸おいた。
「先月、レオくんがうちに来たんです。」
その瞬間、女性は眉間にシワを寄せた。
「……レオ…が?」
「はい。」
そう答えると、女性は「とりあえず中に」と、あたしを招き入れた。
ピシャッ、と玄関扉が閉められる。
中は高級な旅館のように、高そうな骨董品や植物が並んでいた。