Dandelion‐天使の翼‐
―…カチャ…
純和風の室内には似つかない、紅茶があたしの前に出された。
未だに少し震える女性に、違和感を感じる。
「……あの…」
すると女性はあたしとほぼ同時に口を開いた。
「ごめんなさい……」
あたしはキョトンと女性を見る。
「…本当に……ごめんなさい…」
はらはらと流れ落ちる涙に、あたしは何となく状況を読み取った。
「……お母さん………なの?」
あたしが言うと、コクコクと頷く。
「……嘘……」
ずっと死んだと思っていた母親が、目の前にいるこの女性。
あまりの衝撃にあたしは言葉を失った。
「…シイナ…大きくなったね…
もう、22歳だもんね……」
女性はあたしに言う。
「……どうして……あの時迎えに来てくれなかったの…?」
やっと出た擦れた声であたしは訊いた。
「……迎えに…行けなかったの…行きたかったんだけど……」
お母さんの膝の上に、ポタポタと涙の跡が染み付いていた。