Dandelion‐天使の翼‐

大きな畳の部屋に入ると、レオの笑顔の遺影が大きな仏壇の横に置いてあった。


先月見た、あの無邪気な笑顔。




「…レオはね……車道に飛び出した子供を庇ってね……

本当に…優しい子だったの…

『いつか、僕がおねぇちゃんを連れて来るよ』って……



本当に連れてきてくれた……」

母は目尻にシワをたくさん作って、眩しそうにレオの遺影を見つめた。



あたしは、ライターで線香に火を灯して、仏壇の前に置く。


「……レオ…ありがとう…」




あたしを施設に入れた時に出来ていた子供が、レオだったそう。


「…シイナは、小さい頃たんぽぽが大好きでね、いつも摘んでは私にくれたのよ。」


レオの遺影を前に、母が呟く。


「…たんぽぽは英語で"タンデライオン"て言うの。

私、あなたが忘れられなくて……だから、この子にレオって名付けたの…」


「ライオン……レオ。」


あたしは、小さく呟いた。


たんぽぽの花を目の前に、無邪気に笑っていた笑顔が脳裏に浮かぶ。


「…レオ…ありがとう……」


お母さんはまた、目に涙を浮かべて言った。


あたしとお母さんは、その後時間を忘れてレオの遺影の前で語り合った。


不思議だけど、初めての家族。


レオが導いてくれた、たった一人の………

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