Dandelion‐天使の翼‐
「いいなー。シイナは。」
ウルウルの口を尖らせてユキが呟く。
すると、あたしとユキの間を遮るように目の前にサラダが置かれた。
頼んでもないのに…と、思わず腕の先を見上げるとそこには見慣れた顔があった。
「…お客様方。店内での卑猥な話はご遠慮ください。」
金髪のベリーショートの髪に、シルバーのピアス。切れ長の目をしたいかつめの男。
腰の辺りに『テルヤ マサト』と書かれたプレートがぶらさがっている。
「ごめーんっ、テルー。」
ユキが顔の前で手を合わせて言う。
見下すようにユキに向かう視線が、あたしに向けられた。
「ごめんごめん。」
平謝りするあたしに、テルが口を開く。
「ぶっさいくな顔。」
テルはそれだけ言うと、回れ右をして奥の方に姿を消した。
「…相変わらず失礼なヤツだね」
ユキが笑いながら呟く。
「まぁ、正論だけどね」
あたしは、窓ガラスの方に顔を向け、やつれた顔の自分を見て、少し笑った。