Dandelion‐天使の翼‐
昼下がりの喫茶店。
遠くには、20~30代の主婦達と小さな子供が楽しげに集まっていた。
主婦たちの他愛ない会話に合わせて、甲高い小さな子供の声。
あんな風景を見ると、ふと思い出す。
幼い頃に母親に捨てられた事。
毎日、施設の隅でじっと母親を待っていた事。
そして高校生の時、その母親すらもこの世を去ったと風の噂で聞いた事。
…あたしは、
天涯孤独なんだって事。
目を落とした先にある緑を、フォークで突き刺すと、視界の隅に黒い何かが入り込んだ。
「不細工。」
それは、さっきまでユキが座っていた場所にドカッと腰を下ろす。
「…テル。」
「気にすんなよ…あんなん」
テルはそう言ってあたしの飲みかけのコーヒーを口に運んだ。