木霊の四辻
もし声だけでそれだけの呪いがなされているとしたら、木霊は精霊ではない。悪行をなす妖怪である。だが、妖怪だの精霊だのが実在してたまるかと、リアリストの部分が痙攣している。
(仮に、それらすべての被害と現象が史実だとして、すべてが木霊の仕業だとして、目的はなに……? 人を貶めることが楽しいの……? 解せないことばっかりだわ)
燈哉を一瞥してみると、クッキーで腹が膨れたのか、居眠りをしていた。太い精神である。千里ヶ崎燈哉だけは、たとえ木霊百ぴきに取り憑かれても平然としていられる――そう確信したと同時に、また腹が立って、頭を叩いてやった。
「ンあ……?」
その、衝撃で、
「あ――」
燈哉はぐらりと倒れた。頭から、閉めきられているベッドのカーテンへ突っ込んでしまう。
「いやああああぁぁぁぁぁぁああああいあ!!」
「!?」
悲鳴が、あがった。一緒に、頭から突っ込んだ燈哉が、ばたばたもがき始める。燈哉も悲鳴のようなものをあげているようだが、布団でもかぶせられたのか、くぐもった声しか聞こえない。
カーテンの内側で、八木麻衣子がヒステリーを起こしていた。
(仮に、それらすべての被害と現象が史実だとして、すべてが木霊の仕業だとして、目的はなに……? 人を貶めることが楽しいの……? 解せないことばっかりだわ)
燈哉を一瞥してみると、クッキーで腹が膨れたのか、居眠りをしていた。太い精神である。千里ヶ崎燈哉だけは、たとえ木霊百ぴきに取り憑かれても平然としていられる――そう確信したと同時に、また腹が立って、頭を叩いてやった。
「ンあ……?」
その、衝撃で、
「あ――」
燈哉はぐらりと倒れた。頭から、閉めきられているベッドのカーテンへ突っ込んでしまう。
「いやああああぁぁぁぁぁぁああああいあ!!」
「!?」
悲鳴が、あがった。一緒に、頭から突っ込んだ燈哉が、ばたばたもがき始める。燈哉も悲鳴のようなものをあげているようだが、布団でもかぶせられたのか、くぐもった声しか聞こえない。
カーテンの内側で、八木麻衣子がヒステリーを起こしていた。