木霊の四辻
「やっぱり、それが動機ね」

「そうだ!」

と大野は猛った。居直ったらしい。言葉より、高笑いが先にきた。

「呪いによって怯えた生徒が私を頼ってくる! 私がいなければ崩壊してしまうと嘆き、求めてくる! わかるか宮部、この、優越感が!」

「わかんないわ」

人から頼られるための努力を怠り、歪んだ方法で生徒を屈服させ、あまつさえおもちゃにするなど、理解りたくもなかった。

そして、そんな歪んだ方法で得た優越感など……。

「ははははっ、そうとも、わかるまい、お前には!」

大野の声に、自虐なのか自嘲なのか、陰湿なものが混じり始める。耳障りで、下品な笑いだ。

「瀬戸岡は私が最初に落とした生徒だった。実に愉快だったよ。模範的で優秀な生徒が、私なしでは精神を保てないさまは……。君も見ただろう、此瀬とおきを! 彼女は私のかわいい生徒だ……ふふ、はははは! 彼女これから、彼女の手で仲間を増やしてくれるだろうね。そして私が支えてやる。私だけが彼女らを支えられる!」

そしてまた、下衆な笑いが。

今野も八木も相田も、そのほか多くの生徒も、このまま木霊の四辻が息づけば、大野のおもちゃに成り下がってしまう。
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