木霊の四辻
低能な輩が私欲のために下法をもって他社を蹂躙するなど、悪逆非道も極まれる。
「おい、下郎」
「は……?」
「矯正してやるから、覚悟しなさい」
特殊風紀委員として、懲罰執行に移った。
右手を、頭上へ掲げる。逆光となっている大野からはどう見えたか、白紙の紙切れが――今野らに配ったのと同じ紛い物の護符が、指に挟まれていた。
と、それを大野が確認するか否かのタイミングで、ゆいは部屋の扉を閉めた。薄暗い部屋の明かりが、完璧に失われる。同時に、天井でガラスの砕ける音。蛍光灯が破壊されていた。
そして、ゆいは高速で何事かを呟き始める。到底、凡人にはただの雑音としか聞こえないそれと共鳴するように、
―― いや、やめて、やああああっ! ――
―― 来るな来るな来るな来るな来るな来るなあああああ! ――
「っ、な!?」
部屋の壁という壁を叩くような轟音で、少女らの悲鳴が爆発した。
木霊の四辻で起こったことと同じ現象が、今この部屋で再現されている。
「な、なんだ、こんなもの……!」
大野は、鼻を鳴らして笑った。勝手知ったる自分の部屋である。大野は暗闇の中ながら、部屋の壁際へ向かう。
「おい、下郎」
「は……?」
「矯正してやるから、覚悟しなさい」
特殊風紀委員として、懲罰執行に移った。
右手を、頭上へ掲げる。逆光となっている大野からはどう見えたか、白紙の紙切れが――今野らに配ったのと同じ紛い物の護符が、指に挟まれていた。
と、それを大野が確認するか否かのタイミングで、ゆいは部屋の扉を閉めた。薄暗い部屋の明かりが、完璧に失われる。同時に、天井でガラスの砕ける音。蛍光灯が破壊されていた。
そして、ゆいは高速で何事かを呟き始める。到底、凡人にはただの雑音としか聞こえないそれと共鳴するように、
―― いや、やめて、やああああっ! ――
―― 来るな来るな来るな来るな来るな来るなあああああ! ――
「っ、な!?」
部屋の壁という壁を叩くような轟音で、少女らの悲鳴が爆発した。
木霊の四辻で起こったことと同じ現象が、今この部屋で再現されている。
「な、なんだ、こんなもの……!」
大野は、鼻を鳴らして笑った。勝手知ったる自分の部屋である。大野は暗闇の中ながら、部屋の壁際へ向かう。