木霊の四辻
「おい瀬戸岡! これはお前の仕業か! お前が宮部に協力してるのか、どうなんだ!」
転がっている少女の胸ぐらを掴んで揺さぶるが、薬を与えられたばかりの瀬戸岡はボウッとしている。意味も理由もない「あー」が二回、発せられた。
「くそっ……!」
悪態をついて、大野は瀬戸岡を床に捨てた。
頭を抱える。
スピーカーがない。どこにもない。声のあるじがすぐ近くにいるというのか。ありえない。この部屋には自分と瀬戸岡亜美と宮部ゆいの三人だけだ。
しかし、聞こえているのはここにいない少女のものだ。
なぜ聞こえる――なぜ――なぜ――なぜ、なら――そう。宮部ゆい――彼女が高速で呟くざれ言を止めれば、この木霊も止まる。
「宮部ええええええ!!」
ケータイのライトを向けて場所を確認した大野は、突進した。
ゆいはそれと同時に詠唱をやめる。そして掲げていた右手を勢いよく振り下ろした。
「天誅!」
ガン! という固い音がし、
「ぎゃっ!?」
後頭部に衝撃を受けた大野が床に顔面から倒れ込んだ。からりと転がったケータイのライトが照らすのは、白目を剥いた大野と、その向こうに転がっている、角の割れたCDコンポ。
転がっている少女の胸ぐらを掴んで揺さぶるが、薬を与えられたばかりの瀬戸岡はボウッとしている。意味も理由もない「あー」が二回、発せられた。
「くそっ……!」
悪態をついて、大野は瀬戸岡を床に捨てた。
頭を抱える。
スピーカーがない。どこにもない。声のあるじがすぐ近くにいるというのか。ありえない。この部屋には自分と瀬戸岡亜美と宮部ゆいの三人だけだ。
しかし、聞こえているのはここにいない少女のものだ。
なぜ聞こえる――なぜ――なぜ――なぜ、なら――そう。宮部ゆい――彼女が高速で呟くざれ言を止めれば、この木霊も止まる。
「宮部ええええええ!!」
ケータイのライトを向けて場所を確認した大野は、突進した。
ゆいはそれと同時に詠唱をやめる。そして掲げていた右手を勢いよく振り下ろした。
「天誅!」
ガン! という固い音がし、
「ぎゃっ!?」
後頭部に衝撃を受けた大野が床に顔面から倒れ込んだ。からりと転がったケータイのライトが照らすのは、白目を剥いた大野と、その向こうに転がっている、角の割れたCDコンポ。