短編集 cafe an
甘いチョコレートの香りがカップから漂う


生クリームを少し落として
ココアパウダーを降った


銀色のスプーンに添えるのはビスコッティ





「はい。
どうぞ。」



カウンター席に座った楢崎くんの前にカップを置く


「うわぁ。やっぱり、尚子さんのホットチョコは香りが違いますね。」



そう言って大きく息を吸い込む彼はゆっくりカップを口に運ぶ




一口飲んで彼は呟いた
「…甘い…。美味い…。」



やっぱり
素直に嬉しくて微笑む私


「その顔…。」



「え?」


楢崎くんが真剣な表情で私を見つめた



「初めて会ったときも、今と同じように…
尚子さんは子供のような笑顔で…―
嬉しそうで。俺は一瞬にして吸い込まれました。」



「え?
初めてあったとき?」




「覚えてないかもしれないですけど。
オープンしたての頃、俺ここに来たんです。」




「うそ!?…覚えてないよ…。」


楢崎くんは静かにカップを置いた
< 12 / 34 >

この作品をシェア

pagetop