短編集 cafe an
「おはよう。店長。」


ピンクのルージュが輝く唇
ゆっくり弧を描いてほほ笑んだ


「おはようございます。
谷原さん。」

私も笑顔を返す


「いつもの。
…二つね。

今、彼が来るから…。」


そう言ってウインク一つ
零した彼女の笑顔は
幸せに満ちていた



「かしこまりました。」



カウンターに
エスプレッソの香が満ちる頃



カランッ♪


ドアベルが鳴って


来客を告げる


「いらっしゃいませ。」







『本日のお勧め
カプチーノ』

店頭の黒板の文字が
冬空に笑っていた








おしまい
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