短編集 cafe an
大手チェーン店が凌ぎを競うカフェ業界


私はそんな争いに巻き込まれないように
静かな路地に
小さなカフェを二年前に構えた


私とアルバイト3人で回している小さな小さなカフェ

それでも
毎日のように来てくれる顧客は数えきれない

まぁ
年齢層は遥かに高いけどね


まだ若い彼は
駅近で
メジャーで
何処にでもある
そんなカフェにしかいかないのだろう



私は笑顔で頷いた
「好きなお席にどうぞ。」


促すと
私の目の前のカウンター席にゆっくり座る



メニューカードに目を通す彼

不揃いな濃い睫毛
高く通った鼻筋

寒さで赤くなった頬

店内にいるのにグルグル巻きのマフラーに顎の先を突っ込んでいる


フッ…
思わず笑いがこぼれた


「あのっ…。」


それに気づいた彼が慌てて顔を上げた
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