片腕の人形
通話が切れた後、俺はあくびをしながら部屋に戻った。


部屋に戻った時、俺はまた机の上の異変に気付いた。


離したはずのあの片腕の人形が、

うつ伏せになってる英明の人形の隣に座っていた。


その顔は不思議と笑顔で、身体は赤く色あせている。


「おっかしいな…。無意識にここに置いちゃったのかな…」

俺はもう一度片腕の人形を持ち上げた。

ひとつしかない腕が特に赤く染まってる。

「あーあ、色あせちゃって…ま、どうせ捨てるしどうでもいいか」

でもこいつ、こんな笑顔だったっけ。片方しか目がないのに口が妙に笑ってやがる…。

「気持ち悪ィ」

俺はそのボロボロの人形を机の端に置き、いつでも捨てられるようにした。

「ゴミ箱にゴミ袋しいてないしな…今はここで我慢しろ、そのうちちゃんと捨てるから」

俺は独り言をつぶやいて、5つの人形をしまおうと、英明の人形を手に取った。


「え…」

俺は驚きの声を上げた。


英明人形の顔はズタズタにされていた。

目のピースは取れていて、顔からは綿が所々はみ出していた。


「ひどい…。ねぇちゃん、イタズラにもこれはやりすぎだ!」


俺はあふれる怒りを抑えて姉の部屋へ向かった。

どしどしと音を鳴らし、荒々しくドアをあけて、怒りと悲しみをぶつけようと大声を上げた。

「おい!ねーちゃん!よくもやってくれたな!どうおとし前つ…」

俺はそこで言葉を切った。部屋には誰もいなかった。

「…」

俺は階段へ向かった。

「…かーさん!かーさん!」

俺は小走りで一階に降りる。

「かーさん、ねーちゃんどこ?」

「はぁ?あんたねぇ、人の話聞いてなさい。ねーちゃんは大学の友達とカラオケだっていったでしょ?」

…は?

俺は言葉が詰まった。

どういうこと…、じゃあアレはねーちゃんじゃない…?

「まったく人の話を簡単に聞き流して…」





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