片腕の人形
「え、いつからカラオケに行ったの?」

俺は静かに聞いた。まさか…本当に…。

「今日の朝からよ。だから、用があるなら今のうちにって…」

「小言につきあってらんない」

俺はそう言い捨てて、急いで自分の部屋に戻った。


部屋のドアをしめ、状況を整理しようとする。

どういうことだ、どういうことだ!どういうことだ!!

ねーちゃん以外にイタズラをするやつがいるとは思えない。

なら誰が?泥棒なんて考えられない。なら…。


「人形が…勝手に動いた?」


一番考えたくないことを口にした俺は頭をガンガン振った。

そんなはずない!人形が?勝手に?あるはずない!

俺は机の上の5つの人形を、袋に入れた。

「どういう偶然がかさなった現象かしらないけど、もうこれで終了だ」

俺は机の引き出しのなかに人形が入った袋を入れ、片腕の人形をゴミ箱に捨てた。

「これでもう、お前は動かない。こんなホラーまがいなことは二度とごめんだ」

俺は自分でもわからないがイライラした。

人形が勝手に動く。そんなこと認めない。認めるべきではない。

だが、心の奥にひっかかってる不安は押しつぶせなかった。




次の日俺は携帯電話の音で目を覚ました。

眠い目をこすりながら時計を見た。

「6時…何でこんな早くから」

俺は電話をとった。

三澤…?

俺に電話を出た。

「あい」

「真?ねぇ聞いてよ、英明のことだけど、アイツ両親が旅行に行くって言ってたのを思い出したの」

「…うん?」

「だから、英明と連絡がつかない件よ。朝になっても連絡付かないの」

「マジかよ…。やっぱり旅行なんじゃん」

「だから!『両親』が旅行なの!英明は家事もできるし料理もできる万能だから、ひとりでも大丈夫って両親がふたりきりで旅行に行ってるの!」

「…じゃあ」

「英明と連絡が取れないのは、旅行なんかじゃない」




< 11 / 28 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop