片腕の人形
「…そんな」

「……」

しばらくの沈黙。

お互いなにも言葉にできなかった。

英明が死んだ。それはまったく実感できなかった。

その沈黙を破ったのは俺だった。

「本気で言ってるのか…」

「そうだって!こんな冗談言わないよ!」

「…英明が…」

死んだ。

あいつが!?

嘘だ。そんなばかな。

夢ならさめてほしい。

そうありきたりなことを考えた。

俺は優衣が一緒にいることに気付き、三澤に聞いてみた。

「なぁ三澤…お前も結構キツいと思うけどさ、優衣のほうは…大丈夫なのか?」

少しの間。

「はっきり言って大丈夫とは言えない…。今少し落ち着いてるみたいだけど、かなりショック受けて…」

「やっぱり…」

「体中が震えてるよ…今安心できるところに移動したところ」

「そう…か…。なんつーか…信じらんねぇ…信じたくない」

「うん…」

「三澤」

「うん…?」

「お前…強いな」

「当り前でしょ」

「…そうだな。…このこと…健志には…」

「まだ…あたしもさっきまでテンパってて…今やっと携帯取れたとこ…」

俺の声も少し震えていた。

「そうか…。じゃあ俺が伝える。お前たちは休んでてくれ」

三澤は小さく言った。

「うん…そうさせてもらう」

「じゃあ」

俺は電話を切ると、ベッドに突っ伏してしばらくじっとしていた。

「警察にも連絡しないとな…」

俺はつぶやいた。そして英明のことを思い浮かべる。


「…嘘だろ…」


なんども俺はその言葉を繰り返した。





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