片腕の人形
それから数時間が経った。

俺はうつむいたまま携帯をとり、健志に電話をかけた。

「おう。真か。どうした?」

俺は咳払いをした後言った。

「あー。健志。えーっと。今あえるか?電話じゃ言いにくいんだが…」

「はぁ?悪いが今取り込んでて会えないよ」

「そう…でもそこをなんとかさ」

「無理だって。電話で言ってよ。こっちだって暇じゃないんだ」

電話越しにはゲームの効果音が聞こえる。

「…わかった。じゃあ話すぞ。驚かないで聞いてくれ」

「おう」

その時電話越しに大きな音が聞こえた。

ガラスが割れたような音だ。

「うぁ!やりやがった…。あのクソ猫。また来てやがる…」

「健志?」

「悪いけどまた後にしてくれ!今はちょっと…天罰を与えないと…」

「おい健志!真面目な話で…」

「ブッ」

「あ…」

切りやがった。アイツ…。親友が死んだのに…。

いや、俺は言おうと思えば言えた。急いで言えばよかったんだ。

言えなかった。健志にそんなこと…。

「三澤はホントすごいな…」

俺は携帯を閉じながらつぶやいた。


俺はその後、警察に電話しなきゃいけないと思い、110を素早く押した。

「はい。こちら警察です」

「あの…」

俺は英明のことを話した。



「…その死体をあなたはみましたか?」

「いえ、でも友達がみて…かなりショックを受けてます」

「…わかりました。至急、警官と、救急車を送ります。まだ友達は助かるかもしれないから、元気を出して」

「はい…あっ救急車は友達が呼んだんですが…」

「そうですか。わかりました。では早急に。友達にも一応…色々聞かなきゃいけないから連絡付く?」

「あ…はい、でももう少し後にしてあげてください」

「…わかりました。では改めてあなたに連絡します」

俺は電話を切るとまたうつむいてしばらく過ごした。







< 15 / 28 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop