片腕の人形
「さて…。取りあえず、ゲームして時間をつぶそうかな…」

こんなときにゲームなんて不謹慎だと思うが、

俺はゲームをすると決めた。

そうやってなにか他のことに集中したかった。

一時でいいから現実から離れたかった。

俺は机にゲーム機を取ろうと近づいた。

「!」

そのとき俺の目に入ったのは…。

健志の人形の首を絞めている、片腕の人形だった。


「どうなってる…!」

人形は机にしまったはず…!

それにあの人形に限っては捨てた…!

捨てた…ハズなのに…!

俺は恐る恐るボロボロの人形を手に取り、顔をよく見た。

その顔は満面の笑みを浮かべ、まるで自分に陶酔してるようだった。

そして体中、赤いしみがさらについていた。

「どうして…」

俺はその時、健志の人形が目に入った。

顔が何となく青ざめていて、表情が人形らしくない、まるで死体の人形を見てるようだった。


そういえば…英明が死ぬ前…あの人形が、英明人形をボロボロにしていた…。

「…まさか!」

俺は自分に言い聞かせた。

そんなことあるわけがない。ただの偶然だ。そうだ、これだって誰かの…。


…でも、親がこんな悪戯するわけない。

姉は多分、まだ帰ってない。友達の家に泊まるっていってたし…。


本当に人形が勝手に…。

「いや!ない!」

俺はボロボロの人形をわしづかみにし、窓から外へ思いっきり投げた。

悪戯ならこれでもうできない。不気味なものはさっさと捨てるべきだったんだ。

俺は人形を袋に入れ、開け口を固く閉じ、鍵がかかった引き出しに入れた。


「…はぁ」

なんだかすごく疲れた。いやなことが起こりすぎてる。

俺はベットにうつ伏せに倒れこみしばらくぼーっとしていた。



ふと健志に英明のことを伝えなくてはと思った。

俺は携帯をとり、健志に電話した。

コール音が聞こえるが、いつまでたっても健志はでない。

「…おかけになった電話番号は、現在、電波の届かないところにあるか…」

「チッ」

まだなんかしてるのか…。

俺は舌打ちをもう一度して三澤にメールをうった。





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