片腕の人形

「早くこいよ!真!」


「ちょ…待て」

俺はかなり疲弊した身体を引きずってバスを何とか降りた。

「う…気持ち悪い…」

「お前、すぐに車酔いするよな。情けない」

髪にワックスを塗りまくっている早乙女 健志が笑いながら言った。


「車酔いは生まれつきだ…。それにお前の名前のほうが…男として…情けない」


「うるさい!こっちだって生まれつきだ!」


「静かにしろよ、健志。真はもっとしっかり歩け。ふらふらして危なっかしい」

体格のいい、茂地 英明(ヒデアキ)が俺らを叱る。

「…気持ち悪い…天気も含めて」

俺が言った。

「ああ…さっきまであんなに晴れてたのに…」

健志も思わず口を開く。


緑豊かな草原。

流れるきれいな川。

空気はとてつもなくうまい。

そんな期待をしていた俺たちはかなり裏切られた感じがした。


「暗くなってきたねー」

友達の相沢 優衣が不安をもらした。

確かに空は暗雲が広がり、昼とは思えない暗さだった。

「これ、早めにテントたてたほうがいいんじゃない?」

もう一人の女友達、三澤 真由美が名案を出す。

「そうだな、予定地よりも近くにキャンプ場がある。雨降られても困るし、今回はそこで一泊するか」

5人の中でリーダー的立場の英明が言う。これはもう決まったようなものだ。

「賛成です。将軍」俺は弱々しい声で言った。「もう俺は限界だ…」

すると優衣が声をかけてきた。

「じゃあ、早めに行こう。走れる?荒崎くん」

「最後の力を振り絞れば…」


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