片腕の人形
そう、まったく同じだった。

健志の人形はあの片腕の人形に首を絞められていた。

英明の人形もうつぶせに倒れてて…三澤の話では英明はうつ伏せに倒れてた…。

「んな…バカな…」

人形が人を殺している。

「そんなことが…あるわけが…」

英明も健志も殺された。

なら…次は…。

「俺か…三澤か…優衣…」

普通ならこんな現実はあるわけないと思うだろう。

でも俺はもう現実を信じられない。

あの人形が何度も机の上にいる時点で、もう現実なんて通じない。

「なんとかしないと…」

もしかしたら次は俺かもしれない。優衣かも三澤かもしれない。

早く…早く…。

「あの人形を…捨てないと…」

俺は健志の部屋を全速力で駆けだした。

警察に連絡しなきゃいけない。でもそんなことしていられない。

殺される…人形に殺される…!

その言葉が頭を何度もまわった。

俺は健志の家を飛び出すと、自分の家に向かってさらに加速した。

時折、通行人にあたったが、相手が文句を言う前に通り過ぎた。

人形は…投げ捨てた…。

でも…まだ安心できない。

「ぐちゃぐちゃにして…燃やさなきゃ…」

早く…早く…。


俺はその時、優衣たちに連絡をするのを忘れていた。

いや、一時は思い出したが、すぐに忘れた。

あの人形を燃やせば、全部安心だと思っていたからだ。

でもその考えは甘かった。


家へもどり、自分の部屋の窓が見える場所へ移動した。

あの人形は…どこだ…。

「確かここら辺に投げたはず…」

俺は10分ほどあたりを探したが、片腕の人形はどこにもいなかった。

「…まさか…」

俺は荒げる息を整えて自分に言い聞かせた。

いや…そんなはずない。きっと違う。犬かなんかがくわえて行ったんだ。

俺はそう信じて、恐る恐る家の中に入った。



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