片腕の人形
「もし優衣のなら、アイツの人形職人の道は険しいだろうな…」


俺は苦笑いしながらその人形をバッグにいれた。


俺が立ち止っているのを見計らったかのように、雨がさらに強くなってきた。視界に入ってくる雨粒は太さ1cmはあるかのように見えた。

「こりゃマジヤバいかも…!」

俺は手で頭をかばい、猛ダッシュで道を走りだした。






「遅っ!汚っ!」

俺が半分びしょ濡れ状態にでキャンプ場にかえってくると、健志が大声をあげた。

キャンプ場には雨のために建てられた、屋根が幅広く続いている食堂に皆集まっていた。

集団できた学生用につくられたこの食堂は、椅子とテーブルがたくさん並んでいるが、今日はどうやら俺ら5人だけらしい。

人数が少ないうえに雨がふっていて、なんだか寂しい感じだ。

「お前たちと育んだ薄っぺらい友情に感謝だな」

俺は爪が伸びてる指二本でハナフックを健志にかけた。

「おぼぁ!」

「ほらもうやめろ。真、タオル」英明が真っ白なタオルを俺になげた。

「ああ、サンキュ」

俺はタオルを受け取ると、頭から顔をじっくり拭いた。

「あぁ~…なんだか散々な一日だな…」

俺はうつむいて言った。

「車酔いはするし、友達に裏切られるし、びしょびしょだし」

「私たちだって濡れたくないし」

三澤が言った。

「しかしまさかここまでひどくなるとな…」英明が溜め息をついた。

外の豪雨は止む気配すら見えず、雨は強くなる一方だった。

「でも、ここでウジウジしてもしょうがないし、きっとご飯作ってるうちに止むよ」

優衣が明るく言った。なんだかやる気わいてくる。

「そうだな、何言っても始まらないし、とりあえず腹ごしらえだ」英明が大きなカゴを取り出した。

「調理器具アンド食材さ!」健志が嬉しそうに声を出す。

「この食材は…カレーだ!」

「キャンプといったらカレーだしね」三澤が人参をわしづかみにした。

「優衣もこの機会をきっかけにニンジン食べられるようにならなきゃね~?」

優衣はうっと唸った。






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