片腕の人形
「ちゃ…ちゃんと食べてるよ!」

優衣が弁明した。

「俺もニンジン嫌いだな~…」健志が玉ねぎの匂いを嗅ぎながら口を開く。

「後、玉ねぎも嫌いなんだよ。あ、それとセロリもだめなの。ぶっちゃけ野菜全部嫌い。野菜滅べ」

「お前は食わず嫌いだろ」俺は健志の玉ねぎを奪い、発芽してないか確かめた。「野菜は美味しいぞ」

英明が一言いう。

「野菜は必ず入れるぞ。それよか肉だ。鶏肉?豚肉?」

「牛肉!」健志がいった。

「んなものない!」




そんな感じで俺たちのキャンプは始まった。

優衣が言っていた通り、カレーを食べたころには雨はやみ、何とか2つのキャンプをたててその一夜を過ごした。

夜は健志が「なぁ、クラスで誰が好き?」と聞いてきたが、俺は完全に無視し、英明も適当にうながしていた。

健志はそのうち自分の自慢話や、クラスの女子ひとりひとりに点数をつけていったが、俺は完全に無視し、英明は眠っていた。

俺もそのうち眠りにつき、気が付いたら朝だった。

その朝はすでに英明は起きており、俺も目覚めは良かったが、健志はどうやら夜眠れなかったらしく、なかなか起きなかった。

「はぁ…」英明は溜め息をついた。

「どったの?」俺は目をこすりながら聞いた。

英明の手にはラジオが握られていた。

「今日は朝は晴天だけど、昼からは豪雨だってよ。ここらへんは特にヤバいらしい」

「いー…まじ?どうする?」

「残念だけど…中止…かなぁ…」

「…しゃーないか…」

「延期にしよう。今度はちゃんと天気のいい日選んで」

「そうだな」

そのは嵐まえの静けさのような晴天で、風がかなり気持ちよく、朝から目がパッチリ覚めた。

英明も同じらしく、朝食は女子がテントから出てくるときにはかなり出来上がっていた。

健志は最後に出てきたのにかかわらず、目元はクマができていて、目は充血していた。

「ひどいな」

英明が思わず声を出した。

「うぁ~…」健志があくびだか悲鳴だかわからない声を出した。

「おい大丈夫か?不眠症かよ」俺もさすがに心配した。

「昨夜は…怖くて眠れなかった」

「は?」みんながいっせいに声を出した。




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